「相加・相乗平均の関係」の使い方や条件、タイミングがよく分からない
「相加・相乗平均の関係」っていつ使ったらいいの?
証明問題や最小値を求める問題をわかりやすく解説してほしい!
こういったお悩みを解決します。
「相加・相乗平均の関係」は、学校のテスト でも 大学入試 でもよく出るため、しっかりとマスターしておかなければいけません。
にも関わらず、学校では「相加・相乗平均の関係」が使える条件やタイミング、問題パターンをあまり教えてくれない!と嘆く生徒が多くいます。
そこで、今回は
- 「相加・相乗平均の関係」のポイント
- 「相加・相乗平均の関係」をいつ使うのか?(3つの条件)
- 「相加・相乗平均の関係」を利用する証明問題
- 「相加・相乗平均の関係」で最小値を求める問題
をわかりやすく解説します!
相加・相乗平均の関係とは?
「相加・相乗平均の関係」は次の形で使います。
$ a>0, \ b>0 $ のとき
$ $ $ \displaystyle{ a + b ≧ 2 \sqrt{ ab } } $
等号成立条件は $ a=b $
(等号成立は $ a=b $ のとき)
補足
「(相加平均)≧(相乗平均)」という本来の意味で言うと
$ $ $ \displaystyle{ { a + b \over 2 } ≧ \sqrt{ ab } } $
の形の方がふさわしいのですが、実戦では、両辺を2倍した
$ $ $ \displaystyle{ a + b ≧ 2 \sqrt{ ab } } $
の形で使うことが多いです。
「相加・相乗平均の関係」で最小値がなぜ求められるの? そもそも「相加平均・相乗平均」ってどういう意味なの? 図を使ってわかりやすく証明してほしい! こういった要望に答えます。 相加・相乗平均の関係とは? 「相加・相乗平均の[…]
相加・相乗平均の関係をいつ使うか?【3つの条件】
「相加・相乗平均の関係」はいつでも使えるわけではなくて、使うタイミング・条件が決まっています。
「相加・相乗平均の関係」が使える条件
- 正の数
- 2数の足し算
- 逆数の(ような)形
この3つの条件がすべて揃って、はじめて「相加・相乗平均の関係」が使えるわけです。
例えば
こんな問題があるとします。
条件① 正の数
まず1つ目の条件は「正の数であること」です。
赤色の部分を見ると、
$ $ $ \color{red}{a>0, \ b>0}$ より $ \displaystyle{ { b \over a }>0, \ { a \over b }>0 } $
が言えますね。
このように、$ \color{red}{a>0}$ とか $ \color{red}{x>0}$ の形で「正の数」が与えられていることが前提条件です。
条件② 2数の足し算
2つ目の条件は「2数の足し算であること」です。
このように「2つの数の足し算」の形のときに使います。
条件③ 逆数の(ような)形
3つ目の条件は「逆数の(ような)形」です。
$ \displaystyle{ \color{red}{ b \over a } }$ と $ \displaystyle{ \color{red}{ a \over b } } $ を見ると、逆数どうしになっていますね。
これがピッタリ逆数でなくてもOKで、例えば
$ $ $ \displaystyle{ x + {2 \over x} } $
とか
$ $ $ \displaystyle{ {2b \over a} + {3a \over b} } $
みたいな形でも使えます。
要するに「2数をかけたら定数になる」ということです。
$ $ $ \displaystyle{ x × {2 \over x} = 2 } $
$ $ $ \displaystyle{ {2b \over a} × {3a \over b} = {6} } $
こんな感じで、かけ算したらキレイに約分できて文字(変数)が消えて、定数だけが残ってくれます。
【相加・相乗平均の関係】証明問題
それでは「相加・相乗平均の関係」を使って解く 証明問題 を見ていきましょう。
【例題1-1】$ a>0, \ b>0 $ のとき、$ \displaystyle{ { b \over a } + { a \over b } ≧ 2 } $ を証明せよ。
問題文に「$ a>0, \ b>0 $」とあるので「$ \displaystyle{ { b \over a } >0, \ { a \over b } >0 } $」(条件①)が成り立ちます。
この正の2数 $ \displaystyle{ \left( { b \over a } \ と \ { a \over b } \right) } $ に対して「相加・相乗平均の関係」を使います。
【解答】
$ a>0, \ b>0 $ より $ \displaystyle{ { b \over a } >0, \ { a \over b } >0 } $ なので
相加・相乗平均の関係により
$ $ $ \displaystyle{ { b \over a } + { a \over b } ≧ 2 \sqrt{ { \require{cancel} \cancel{b} \over \bcancel{a} } \cdot { \bcancel{a} \over \cancel{b} } } = 2 } $
これで、$ \displaystyle{ { b \over a } + { a \over b } ≧ 2 } $ が証明できました。
等号成立条件 も忘れずに書いておきましょう。
等号成立条件は
$ $ $ \displaystyle{ { b \over a } = { a \over b } } $
両辺に $ab$ をかけて
$ $ $ b^2 = a^2 $
∴ $ a= \pm b $
$ a>0, \ b>0 $ より $a=b$ [終]
$a$ と $b$ はともにプラスなので、$a=b$ の方だけですね。
【例題1-2】$ x>0, \ y>0 $ のとき、$ \displaystyle{ { y \over x } + { 3x \over y } ≧ 2 \sqrt{3} } $ を証明せよ。
3つの条件が揃っているので「相加・相乗平均の関係」が使えそうですね。
【解答】
$ x>0, \ y>0 $ より $ \displaystyle{ { y \over x } >0, \ { 3x \over y } >0 } $ なので
相加・相乗平均の関係により
$ $ $ \displaystyle{ { y \over x } + { 3x \over y } ≧ 2 \sqrt{ { \require{cancel} \cancel{y} \over \bcancel{x} } \cdot { 3 \bcancel{x} \over \cancel{y} } } = 2 \sqrt{3} } $
等号成立条件は
$ $ $ \displaystyle{ { y \over x } = { 3x \over y } } $
両辺に $xy$ をかけて
$ $ $ y^2 = 3 x^2 $
∴ $ y = \pm \sqrt{3} x $
$ x>0, \ y>0 $ より $y = \sqrt{3} x$ [終]
以上、「相加・相乗平均の関係」を使って解く証明問題でした。
【相加・相乗平均の関係】最小値を求める問題
次に「相加・相乗平均の関係」を使って 最小値 を求める問題 を解説します。
【例題2-1】$ a>0, \ b>0 $ のとき、$ \displaystyle{ \left( a + { 2 \over b } \right) \left( b + { 8 \over a } \right) } $ の最小値と、最小値をとる $ab$ の値を求めよ。 [類 15 立命館大]
一見すると「相加・相乗平均の関係」は使えなさそうに見えますが、とりあえず展開してみると・・・
【解答】
$ \displaystyle{ \left( a + { 2 \over b } \right) \left( b + { 8 \over a } \right) } $
$ \displaystyle{ = ab + \require{cancel} \cancel{a} \cdot { 8 \over \cancel{a} } + { 2 \over \bcancel{b} } \cdot \bcancel{b} + { 2 \over b } \cdot { 8 \over a } } $
$ \displaystyle{ = ab +{ 16 \over ab } + 10 } $
こんな感じで「相加・相乗平均の関係」が使えそうな形になってくれました。
$ a>0, \ b>0 $ より $ \displaystyle{ ab>0, \ { 16 \over ab }>0 } $ なので
相加・相乗平均の関係により
$ \displaystyle{ \bbox[#F4E2E2, 2pt, border:]{ ab + { 16 \over ab } } + 10 ≧ \bbox[#F4E2E2, 2pt, border:]{ 2 \sqrt{ \require{cancel} \cancel{ab} \cdot { 16 \over \cancel{ab} } } } +10 = 18 } $
これで、最小値は $18$ と分かりました。
あとは等号成立条件から、最小値をとるときの $ab$ の値を出しておきます。
等号成立条件は
$ $ $ \displaystyle{ ab = { 16 \over ab } } $
両辺に $ab$ をかけて
$ $ $ \displaystyle{ a^2 b^2 = 16 } $
∴ $ ab = \pm 4 $
$ a>0, \ b>0 $ より
$ $ $ ab = 4 $
したがって
$ $ $ ab = 4 $ で 最小値 $18$
補足
の部分が分かりにくければ、以下のような書き方でもOK。
$ $ $ \vdots $
相加・相乗平均の関係により
$ $ $ \displaystyle{ \bbox[#F4E2E2, 2pt, border:]{ ab + { 16 \over ab } } ≧ \bbox[#F4E2E2, 2pt, border:]{ 2 \sqrt{ \require{cancel} \cancel{ab} \cdot { 16 \over \cancel{ab} } } } = 8 } $
両辺に $10$ を足して
$ $ $ \displaystyle{ \bbox[#F4E2E2, 2pt, border:]{ ab + { 16 \over ab } } + 10 ≧ 18 } $
$ $ $ \vdots $
【例題2-2】$ x>1 $ のとき、$ \displaystyle{ x + { 1 \over x−1 } } $ の最小値と、最小値をとる $x$ の値を求めよ。 [類 15 大阪工大]
この問題もいきなりは「相加・相乗平均の関係」が使えないので、うまく変形すると
【解答】
$ \displaystyle{ x + { 1 \over x−1 } = x−1 + { 1 \over x−1 } + 1 } $
$ \displaystyle{ (x−1)} $ と $ \displaystyle{ { 1 \over x−1 } } $ が、逆数どうしの足し算になったので「条件②、③」をクリア!
あとは「条件①:正の数」だけですが・・・
$ x>1 $ より $ \displaystyle{ x−1>0 , \ { 1 \over x−1 }>0 } $ なので
相加・相乗平均の関係により
$ $ $ \displaystyle{ \bbox[#F4E2E2, 2pt, border:]{ x−1 + { 1 \over x−1 } } + 1 } $
$ $ $\displaystyle{ ≧ \bbox[#F4E2E2, 2pt, border:]{ 2 \sqrt{ \require{cancel} \cancel{ (x−1) } \cdot { 1 \over \cancel{x−1} } } } + 1 = 3 } $(最小値)
等号成立条件は
$ $ $ \displaystyle{ x−1 = { 1 \over x−1 } } $
両辺に $ (x−1) $ をかけて
$ $ $ (x−1)^2 = 1 $
∴ $ x^2 −2x = 0 $
∴ $ x(x−2) = 0 $
∴ $ x=0, \ 2 $
$ x>1 $ より $ x=2 $
したがって
$ $ $ x=2 $ で 最小値 $3$
以上、「相加・相乗平均の関係」で最小値を求める問題でした。
【相加・相乗平均の関係】応用・入試問題にチャレンジ!
ここまで学んできたことを活かして、「相加・相乗平均の関係」を使って最小値を求める 応用問題 に挑戦してみましょう!
【問題】$ x>0 $ のとき、関数 $ \displaystyle{ f(x) = { x^4 −4x^3 + 5x^2 −2x +7 \over x^2 −2x +2 } } $ の最小値と、そのときの $x$ の値を求めよ。[類 18 自治医大]
この形のままだと「相加・相乗平均の関係」が使えないので、うまく変形しましょう。
- 【解答】を見る
-
【解答】
$ x^4 −4x^3 + 5x^2 −2x +7 $ $ = \left( x^2 −2x +2 \right) \left( x^2 −2x −1 \right) + 9 $ ・・・(注1)
より
$ \displaystyle{ f(x) = { x^4 −4x^3 + 5x^2 −2x +7 \over x^2 −2x +2 } } $
$ $ $ \displaystyle{ = { \left( x^2 −2x +2 \right) \left( x^2 −2x −1 \right) + 9 \over x^2 −2x +2 } } $
$ $ $ \displaystyle{ = { \require{cancel} \cancel{ \left( x^2 −2x +2 \right) } \left( x^2 −2x −1 \right) \over \cancel{ x^2 −2x +2 } } \\ \enspace + { 9 \over x^2 −2x +2 } } $
$ $ $ \displaystyle{ = x^2 −2x −1 + { 9 \over x^2 −2x +2 } } $
$ $ $ \displaystyle{ = x^2 −2x + 2 + { 9 \over x^2 −2x +2 } −3 } $
ここで
$ $ $ x^2 −2x + 2 = ( x −1 )^2 + 1 >0 $
より
$ $ $ \displaystyle{ { 9 \over x^2 −2x +2 } >0 } $
なので、相加・相乗平均の関係により
$ $ $ \displaystyle{ \bbox[#F4E2E2, 2pt, border:]{ x^2 −2x + 2 + { 9 \over x^2 −2x +2 } } −3 } $
$ $ $ \displaystyle{ ≧ \bbox[#F4E2E2, 2pt, border:]{ 2 \sqrt{ \require{cancel} \cancel{ \left( x^2 −2x + 2 \right) } \cdot { 9 \over \cancel{ x^2 −2x +2 } } } } −3 } $
$ $ $ = 3 $(最小値)
等号成立条件は
$ $ $ \displaystyle{ x^2 −2x + 2 = { 9 \over x^2 −2x +2 } } $
両辺に $ \left( x^2 −2x + 2 \right)$ をかけて
$ $ $ \left( x^2 −2x + 2 \right)^2 = 9 $
$ x^2 −2x + 2 >0 $ より
$ $ $ x^2 −2x + 2 = 3 $
∴ $ x^2 −2x − 1 = 0 $
∴ $ x = 1 \pm \sqrt{2} $
$ x>0 $ より $ x = 1 + \sqrt{2} $ ・・・(注2)
したがって、関数 $ f(x) $ は
$ $ $ x = 1 + \sqrt{2} $ で 最小値 $3$
(注1)数学Ⅱ「整式の除法」を参照のこと
(注2)$ x>0 $ より「$ x = 1 − \sqrt{2} $」の方はアウト(範囲外)ですが、念のため確認しておきます。
$ $ $ 1 < 2 < 4 $ より
$ $ $ \sqrt{1}<\sqrt{2}<\sqrt{4} $
∴ $ 1<\sqrt{2}<2 $
辺々に $ −1 $ をかけて
$ $ $ −1>−\sqrt{2}>−2 $
∴ $ −2<−\sqrt{2}<−1 $
辺々に $ 1 $ を足して
$ $ $ −1 <1− \sqrt{2}<0 $
よって、$ x = 1 − \sqrt{2} $ は不適
以上です。お疲れ様でした!
【まとめ】相加・相乗平均の関係
最後に「相加・相乗平均の関係」をまとめておきます。
$ a>0, \ b>0 $ のとき
$ $ $ \displaystyle{ a + b ≧ 2 \sqrt{ ab } } $
等号成立条件は $ a=b $
(等号成立は $ a=b $ のとき)
「相加・相乗平均の関係」が使える条件
- 正の数
- 2数の足し算
- 逆数の(ような)形
この3つの条件がすべて揃って、はじめて「相加・相乗平均の関係」が使えます!
このページで紹介したパターン以外にも、最小値を求める問題で「相加・相乗平均の関係」が使えることがよくあります。
上の3つの条件がヒントになっていることが多いので、利用できるチャンスを見逃さないようにしましょう。
参考:【相加・相乗平均の関係】最大値を求める問題
ちょっと変化球ですが、「相加・相乗平均の関係」で最大値を求める問題 もあります。
「相加・相乗平均の関係」で最大値を求める問題がよく分からない テスト・入試によく出る問題をわかりやすく解説してほしい! こういった要望に応えます。 このページでは「相加・相乗平均の関係」で 最大値 を求める[…]
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