1次不定方程式の整数解(特殊解)を見つけるときに、ユークリッドの互除法を使うやり方だとよく分からない・・・
合同式(mod)を使うと簡単に求められるって聞いたけど、やり方を分かりやすく教えてほしい!
こういった要望に応えます。
このページを読めば、例えば
のような 1次不定方程式の整数解(特殊解)を見つける問題 を 合同式(mod) を使って一瞬で解けるようになります。
ライバルと大きく差をつけられるので、ぜひマスターしましょう!
【1次不定方程式】整数解(特殊解)を「合同式(mod)」で一瞬で見つける裏ワザ
1次不定方程式 $ $$ax+by = c$$ $ の整数解(特殊解)の見つけ方(裏ワザ) はこちら。
- $x,y$ の係数のどちらかで合同式(mod)を考える
- 「$ x \equiv □ \pmod △ $」の形にする
- $x=□$ が整数解のひとつ
この手順でやるとスムーズに整数解(特殊解)が出せます。
【1次不定方程式】整数解の特殊解・一般解のちがい
1次不定方程式 $ $$ax+by = c$$ $ の整数解 についておさらいです。
不定方程式の整数解には「特殊解」と「一般解」の2種類があります。
例えば
問題文の続きが、どう書いてあるか?によって「特殊解」と「一般解」に分かれます。
特殊解:整数解を1つ(1組)求めよ。
もし問題文に「〜整数解を 1つ(1組)求めよ。」と書いてあったら「特殊解」です。
「特殊解」というのは、例えば
のように、不定方程式にあてはまる「具体的な解」$(x,y)$の組 のことです。
特殊解は、この他にも
など無数にあります。
一般解:整数解をすべて求めよ。
逆に「〜整数解を すべて 求めよ。」と書いてあったら「一般解」を求めます。
「一般解」は
のように、整数 $k$ を使って「どんな解でも自由に表せる形」になっている解のことです。
例えば
$k=0$ のとき $x=1, \, y=2$
$k=1$ のとき $x=4, \, y=9$
$k=2$ のとき $x=7, \, y=16$
$ $ $\vdots$
こんな感じで、整数 $k$ の値に色んな数を代入することで、すべての整数解 $(x,y)$ を表すことができます。
整数解の求め方 2つ
不定方程式の整数解の求め方は、大きく分けて「合同式(mod)」と「ユークリッドの互除法」の2つあります。
結論から言うと「合同式(mod)」を用いた解法がオススメです。
合同式(mod)を使うメリットは
- 計算がシンプルで早い
- 特殊解 を求める手順をすっ飛ばして、一気に 一般解 を求められる
という感じで、いいこと尽くめです。
一方、教科書に書かれているような「ユークリッドの互除法」を使った解法は
- 特殊解を求める計算がややこしく、計算ミスが起こりやすい
- 特殊解を求めてから一般解を求めるため、時間がかかる
というデメリットがあります。
数学のテストは時間との戦いです。
素早く正確に計算できる「合同式(mod)」を使ったやり方に慣れておくと、圧倒的に有利だと言えます。
不定方程式の一般解の求め方についてはこちら。
1次不定方程式の整数解(一般解)を簡単に求める方法を知りたい ユークリッドの互除法で求めるやり方が苦手だ・・・ 合同式(mod)を使うと簡単に解けるって聞いたけど、やり方を分かりやすく教えてほしい! こんなお悩みを解消します。[…]
【例題1】不定方程式 $5x+3y=1$ をみたす整数解$(x,y)$ の組を$1$つ求めよ。
それでは、実際に問題を通してマスターしていきましょう!
もちろんこれくらいの不定方程式なら、テキトーに整数を代入していけば
のようにすぐ見つかるかもしれません。
ですが、あえて練習として 合同式(mod)を使って求めてみます。
① $x,y$ の係数($5$と$3$)のどちらかで合同式(mod)を考える
$x,y$ の係数($5$と$3$)のどちらでも答えは出せますが、今回はセオリー通りに小さい方の $\color{red}{3}$ を法とした合同式(mod)を考えてみます。
【解答】
$5x+\color{red}{3}y=1$ より
$ 5x + \color{red}{3}y \equiv 1 \enspace (\text{mod} \enspace \color{red}{3} ) $
この合同式(mod)の意味は、簡単に言うと
$ $ $(5x+3y$ を $3$ で割った余り$)=1$
ということ。
さらに、$\color{red}{3}y$ は $3$の倍数($3$で割り切れる)なので
$ \color{red}{3}y \equiv 0 \pmod 3 $ より、結局
$ 5x + \require{cancel} \bcancel{ \color{red}{3}y } \equiv 1 \pmod 3 $
$ 5x \equiv 1 \pmod 3 $ ・・・①
②「$ x \equiv □ \pmod 3 $」の形にする
$ 5x = (\color{red}{3} \cdot 1 + 2)x = \color{red}{3}x + 2x$
つまり「$5x$ を $\color{red}{3}$ で割ると $2x$ 余る」ので
$\color{red}{3}x$ は $3$の倍数($3$で割り切れる)なので
両辺を2倍して
$ 4x \equiv 2 \pmod 3 $ ・・・②
① $−$ ②より
$ x \equiv −1 \pmod 3 $
③ $x=□$ が整数解のひとつ
よって、$ x = −1 $
これを $5x+3y=1$ に代入して
$5 \cdot (−1) +3y=1$
∴ $y=2$
以上より
$ $ $ x = −1 , \, y = 2 $
整数解(特殊解)が求められました!
ここまでの流れを一気に書くと以下の通りです。
- 【解答】を見る
-
【解答】
$5x+\color{red}{3}y=1$ より
$ $ $ 5x + \require{cancel} \bcancel{ \color{red}{3}y } \equiv 1 \enspace (\text{mod} \enspace \color{red}{3} ) $
$ $ ∴ $ 5x \equiv 1 \pmod 3 $ ・・・①
$ $ ∴ $ \require{cancel} \bcancel{ \color{red}{3}x } + 2x \equiv 1 \enspace (\text{mod} \enspace \color{red}{3} ) $
$ $ ∴ $ 2x \equiv 1 \pmod 3 $
両辺を2倍して
$ $ $ 4x \equiv 2 \pmod 3 $ ・・・②
① $−$ ②より
$ $ $ x \equiv −1 \pmod 3 $
よって、$ x = −1 $
これを $5x+3y=1$ に代入して
$ $ $5 \cdot (−1) +3y=1$
∴ $y=2$
以上より
$ $ $ x = −1 , \, y = 2 $
補足:①の別解
手順①:「$x,y$ の係数($5$と$3$)のどちらかで合同式(mod)を考える」で mod $3$ のもとで考えましたが、$\color{red}{5}$ を使っても答えが求められます。
【解答】
$ \color{red}{5}x+3y=1$ より
$ $ $ \require{cancel} \bcancel{ \color{red}{5}x } + 3y \equiv 1 \pmod { \color{red}{5} } $
$ $ ∴ $ 3y \equiv 1 \pmod 5 $
右辺に 5 を足して
$ $ $ \color{green}{3}y \equiv 6 \pmod {\color{red}{5} } $
3 と 5 は互いに素 なので、両辺を 3 で割って
$ $ $ y \equiv 2 \pmod 5 $
よって、$y=2$
$ $ $\vdots$
$x=−1$
※ 3 と 5 が互いに素 でないときは、両辺を 3 で割ってはいけません。
不定方程式は、このルールを守らないと 正しい答えが出ない ので要注意!
補足:②の別解
手順②:「$ 5x \equiv 1 \pmod 3 $」から
「$ x \equiv □ \pmod 3 $」の形にするところは、他にもやり方があります。
$ $ $ \color{green}{5}x \equiv 1 \enspace (\text{mod} \enspace \color{red}{3} ) $
の右辺が 5 の倍数になるまで 3 を足し続けると
$ 5x \equiv 1 + \color{red}{3} \equiv 4 \\
\enspace \enspace \equiv 4 + \color{red}{3} \equiv 7 \\
\enspace \enspace \equiv 7 + \color{red}{3} \equiv 10 \enspace (\text{mod} \enspace \color{red}{3} ) $
よって
5 と 3 は互いに素 なので、両辺を 5 で割ると
$ x \equiv 2 \pmod 3 $
よって、 $x = 2$
$ $ $\vdots$
$ y = −3 $
と計算してもOK。
参考:「整数解を(すべて)求めよ。」の場合
もし、上記の【例題1】が
だった場合、さっきの $ x = −1 , \, y = 2 $ みたいな具体的な解(特殊解)ではなく、
整数 $k$ を使った 一般解 を答えなければいけません。
「え〜、ここからまだ計算しなきゃいけないの!?」
と思ったそこのキミ、安心してください!
【解法1】合同式を利用する
手順② で「$ x \equiv □ \pmod 3 $」に変形して
この合同式は「$x$ を $3$ で割ると $−1$ 余る」という意味なので
とおけます。
これを $5x+3y=1$ に代入して
$ $ $ 5(3k −1) +3y = 1 $
$ $ ∴ $ 3y = −15k + 6 $
$ $ ∴ $ y = −5k +2 $
以上より
$ $ $x = 3k −1 , \, y = −5k +2 $($k$は整数)
こんな流れで、合同式から一気に 一般解 が求められます。
【解法2】合同式を利用しない
参考までに、教科書に載っているような「合同式を利用しない(ふつうの)解法」も書いておきます。
整数解(特殊解)を見つけてから、一般解を求めるまでの手順です。
整数解のひとつは
$ $ $ x = −1 , \, y = 2 $
これを $5x+3y=1$ ・・・(A) に代入して
$ $ $ 5 \cdot (−1)+3 \cdot 2 = 1 $ ・・・(B)
(A) $−$ (B)より
$ $ $ 5 (x+1)+3 (y−2) = 0 $
$ $ ∴ $ 5 (x+1) = −3 (y−2) $ ・・・(C)
$5$ と $3$ は互いに素なので
$x+1$ は $3$ の倍数、
$y−2$ は $5$ の倍数となり
$ $ $x+1 =3k$($k$は整数)・・・(D)
とおける。
(D) より、$ x =3k −1 $
これを (C) に代入して
$ $ $ 5 \cdot \require{cancel} \bcancel{3}k = −\bcancel{3} (y−2) $
$ $ ∴ $ 5k = −(y−2) $
$ $ ∴ $ y = −5k+2 $
以上より
$ $ $ x =3k −1 , \, y = −5k+2 $($k$は整数)
となります。
【例題2】不定方程式 $7x−11y=5$ をみたす整数解$(x,y)$ の組を$1$つ求めよ。
今度はすぐには整数解が見つかりそうにないですね。
こんなときは、合同式(mod) を使って求めてみましょう。
① $x,y$ の係数($7$と$−11$)のどちらかで合同式(mod)を考える
$x,y$ の係数($7$と$−11$)のどちらでもOKですが、$−11y$ のように係数がマイナスの数は、できれば左辺に残したくない(消去したい)ですね。
そこで、mod $11$ で合同式を作ってみると
【解答】
$7x − \color{red}{11}y=5$ より
$ 7x − \require{cancel} \bcancel{ \color{red}{11} y } \equiv 5 \pmod { \color{red}{11} } $
$ 7x \equiv 5 \pmod {11} $ ・・・①
②「$ x \equiv □ \pmod {11} $」の形にする
左辺に $11x$ を足すと
右辺に $11$ を足すと
2 と 11 は互いに素 なので、両辺を 2 で割ると
$ 9x \equiv 8 \pmod {11} $ ・・・②
② $−$ ①より
$ 2x \equiv 3 \pmod {11} $
両辺に 3 をかけて
$ 6x \equiv 9 \pmod {11} $ ・・・③
① $−$ ③より
$ x \equiv −4 \pmod {11} $
右辺に 11 を足して
$ x \equiv 7 \pmod {11} $
③ $x=□$ が整数解のひとつ
よって、$ x = 7 $
これを $7x−11y=5$ に代入して
$7 \cdot 7−11y=5$
∴ $y=4$
以上より
$ $ $ x = 7 , \, y = 4 $
以上です。
この流れを一気に書くと以下の通り。
- 【解答】を見る
-
【解答】
$7x − \color{red}{11}y=5$ より
$ $ $ 7x − \require{cancel} \bcancel{ \color{red}{11} y } \equiv 5 \pmod { \color{red}{11} } $
$ $ ∴ $ 7x \equiv 5 \pmod {11} $ ・・・①
$ $ ∴ $ 18x \equiv 5 \pmod {11} $
$ $ ∴ $ 18x \equiv 16 \pmod {11} $
2 と 11 は互いに素なので、両辺を 2 で割ると
$ $ $ 9x \equiv 8 \pmod {11} $ ・・・②
② $−$ ①より
$ $ $ 2x \equiv 3 \pmod {11} $
$ $ ∴ $ 6x \equiv 9 \pmod {11} $ ・・・③
① $−$ ③より
$ $ $ x \equiv −4 \pmod {11} $
$ $ ∴ $ x \equiv 7 \pmod {11} $
よって、$ x = 7 $
これを $7x−11y=5$ に代入して
$ $ $7 \cdot 7−11y=5$
∴ $y=4$
以上より
$ $ $ x = 7 , \, y = 4 $
補足:①の別解
手順①:「$x,y$ の係数($7$と$−11$)のどちらかで合同式(mod)を考える」で mod $11$ のもとで考えましたが、$\color{red}{7}$ を使っても答えが求められます。
【解答】
$ \color{red}{7}x−11y=5$ より
$ $ $ \require{cancel} \bcancel{ \color{red}{7}x } −11y \equiv 5 \pmod { \color{red}{7} } $
$ $ ∴ $ −11y \equiv 5 \pmod 7 $
左辺に $14y$ を足して
$ $ $ 3y \equiv 5 \pmod 7 $
右辺に $7$ を足して
$ $ $ \color{green}{3}y \equiv 12 \pmod {\color{red}{7} } $
3 と 7 は互いに素 なので、両辺を 3 で割ると
$ $ $ y \equiv 4 \pmod 7 $
よって、$y=4$
$ $ $\vdots$
$x=7$
こんな感じです。
補足:②の別解
手順②:「$ 7x \equiv 5 \pmod {11} $」から
「$ x \equiv □ \pmod {11} $」の形にするステップの別解です。
$ $ $ \color{green}{7}x \equiv 5 \pmod { \color{red}{11} } $
の右辺が 7 の倍数になるまで 11 を足し続けると
$ 7x \equiv 5 + \color{red}{11} \equiv 16 \\
\enspace \enspace \equiv 16 + \color{red}{11} \equiv 27 \\
\enspace \enspace \equiv 27 + \color{red}{11} \equiv 38 \\
\enspace \enspace \equiv 38 + \color{red}{11} \equiv 49 \pmod { \color{red}{11} } $
よって
7 と 11 は互いに素 なので、両辺を 7 で割ると
$ x \equiv 7 \pmod {11} $
よって、 $x = 7$
$ $ $\vdots$
$ y = 4 $
と計算してもOK。
【練習問題】1次不定方程式の整数解(特殊解)を「合同式(mod)」で見つけよう!
ここまで学んだことを活かして、練習問題を解いてみましょう!
【問題】不定方程式 $64x−75y=19$ をみたす整数解$(x,y)$ の組を$1$つ求めよ。
- 【解答】を見る
-
【解答】
$64x − \color{red}{75}y=19$ より
$ $ $ 64x − \require{cancel} \bcancel{ \color{red}{75} y } \equiv 19 \pmod { \color{red}{75} } $
$ $ ∴ $ 64x \equiv 19 \pmod {75} $
$ $ ∴ $ 64x \equiv −56 \pmod {75} $
8 と 75 は互いに素なので、両辺を 8 で割ると
$ $ $ 8x \equiv −7 \pmod {75} $
$ $ ∴ $ 8x \equiv 68 \pmod {75} $
4 と 75 は互いに素なので、両辺を 4 で割ると
$ $ $ 2x \equiv 17 \pmod {75} $
$ $ ∴ $ 2x \equiv 92 \pmod {75} $
2 と 75 は互いに素なので、両辺を 2 で割ると
$ $ $ x \equiv 46 \pmod {75} $
よって、$ x = 46 $
これを $64x−75y=19$ に代入して
$ $ $64 \cdot 46−75y=19$
$ $ ∴ $2944 −75y=19$
$ $ ∴ $−75y = −2925 $
$ $ ∴ $y= 39 $
以上より
$ $ $ x = 46 , \, y = 39 $
(注)$x,y$ の係数($64$と$−75$)のどちらでもOKですが、$−75y$ のように係数がマイナスの数は、できれば左辺に残したくない(消去したい)ですね。今回は mod $75$ で合同式を作った方が計算がラクになります。
どうでしたか?
この問題がスラスラ解ければ、大学入試で 1次不定方程式 の問題が出ても安心です!
【まとめ】1次不定方程式の整数解(特殊解)を「合同式(mod)」で見つける裏ワザ
最後に、1次不定方程式の整数解(特殊解)の見つけ方(裏ワザ) をまとめておきます。
- $x,y$ の係数のどちらかで合同式(mod)を考える
- 「$ x \equiv □ \pmod △ $」の形にする
- $x=□$ が整数解のひとつ
何度も練習してしっかり解けるようにしておきましょう!
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